top of page

#3 フランスが私に教えてくれたこと。

  • 5月18日
  • 読了時間: 2分





センスとは、選び方の奥に宿る。




そう、フランスが私に教えてくれました。



「どっちが似合うと思う?」



パリの、とある小さなブティックでの出来事。





新作のジャケットを手に取り、



どちらの色にしようか迷っていた私は、ふと店主に問いかけました。




すると、返ってきたのは予想外のひと言。



「それを、私に聞くの?自分で感じてみて。」




一瞬、胸を突かれるような気持ちになりました。




でもその言葉には、どこか愛があり、



まるで私自身の



“センス”に対して問いを投げかけてくれているようでした。





日本で日常的に過ごしていると、



私たちはつい「他人の目」や



「正解らしきもの」にすがってしまうことがあります。





でもフランスでは、「どう見られるか」よりも



「どう感じるか」を尊ぶ姿勢が、あらゆる場面に通っている。



ファッションもその一つです。





たとえば、パリの街を歩く女性たちは、



誰もが“自分のスタイル”を持っているように見えます。





それは流行を追っているわけではなく、



自分自身の歴史や日常、感性と繋がっている服の選び方。




一見、古びたコートや、色あせたパンツをさらっと着ている。




でもその組み合わせの中に、その人が歩んできた時間や背景が静かに滲んでいるのです。





ある日、カフェで出会った年配の女性は、



20年前に買ったスカーフを誇らしげに巻いていました。




「これはね、私が若いころに初めて“自分の意思”で買った一枚なの」




そう話す彼女の目は、まるで少女のように輝いていました。





フランスの人々は、モノに意味を重ねていく。



新しいから美しいのではなく、



その人の時間を通して、美しさが“育っていく”。



私はその姿勢に、心から感銘を受けました。




センスとは、見せるための演出ではなく、



自分をどう大切にするかという哲学。





そしてそれは、服選びに限らず、生き方にも深く関わっています。



パリで出会った店主のあの言葉。




「自分で感じてみて。」





あのとき、私はようやく「選ぶこと」の意味を知った気がしました。





どっちが良いかじゃなくて、





どっちが“私にとって”ふさわしいか。





他人に預けていた感覚を、自分の手に戻していくような時間。




それこそが、私にとっての“センス”の始まりだったのです。

Comments


bottom of page